こんにちは!
アジャイル事業部の @maimux2x です。
2026年4月22日から24日まで北海道函館市で開催された RubyKaigi 2026 に参加してきました。
rubykaigi.org
本記事ではアジャイル事業部から参加したメンバーそれぞれの感想を参加レポートとしてお届けします。
maimu
印象に残ったセッション
Require Hooks: Filling the Gap in Ruby's Extensibility
Vladimir Dementyev(palkan)さんによる Ruby でソースコードのロード(require)に介入する標準機構がないことについて、require-hooks という gem で実現するという内容の発表でした。require-hooks には以下の3種類のフックがあります。
around_load : ファイルのロード前後に処理を挟む(ログ、計測)
source_transform : ソースコードを書き換えてからロードする
hijack_load : ISeq を自分でコンパイルして渡す
その中でもhijack_load の話は RubyVM::InstructionSequence#load_iseq という Ruby 2.3.0 のころから存在する API を使って実現されていて、新たな仕組みを作るのではなく既存の仕組みをうまく活用して、Ruby を拡張している点が自分の中ではすごく印象に残っています。
Matz Keynote
まつもとさんが AI を活用しながら日々の開発を楽しんでいらっしゃる要素がひしひしと伝わってきて、私自身ももっといろいろなものを作りたいという気持ちをもらえたキーノートでした。一方で、私は AI を使いこなすだけの基礎的な知識がまだまだ足りていないため、そういう部分に関しては自分から学びに行ったり、自分でもっと手を動かしながら作るということを続けていきたいと同時に感じました。自分に合った AI の活用を模索しながら、Rubyでの開発をこれからも楽しんでいきたいと思いました。
wai-doi
印象に残ったセッション
The future of Ruby documentation
普段からRubyのドキュメントにお世話になっているので、今回のStanさんお話はとても興味深かったです。
まずRDocのテーマ刷新について。数ヶ月前からモダンで見やすくなったなと感じていたので、その背景を知ることができてスッキリしました。
また、RDoc独自のマークアップ記法からMarkdownへの移行についての話が印象的でした。膨大な既存ドキュメントの置き換えという、人手では困難な作業も、AIを活用して効率化できるというお話には納得感がありました。これまで手間のかかっていた定型的な書き換えが、AIのおかげ楽になったんだなと実感しました。
終盤のllms.txtに関する考察も面白かったです。コーディングエージェントは内部でHTMLをMarkdownに変換しているため、AI専用のファイルを作るメリットよりも、メンテナンスのコストを考えて作らないと判断するのは、重要な視点だと学びになりました。
「人間のためになるものは、結果的にAIのためにもなる」という考え方をされていて、ドキュメント作りに限らず他の場面でも応用できそうに思いました。
kasumi8pon
印象に残ったセッション
Funicular: A Browser App Framework Powered by PicoRuby.WASM
これまでの hasumi さんの PicoRuby の発表では、キーボードやマイコン上で Ruby が動く話が面白くて、今回も楽しみにしていました。自分の中では PicoRuby はマイコンのイメージが強かったので、今回はブラウザ、しかもフロントエンドフレームワークの話ということで、どんなふうになるのだろうと思いながら聞きました。
Funicular によってフロントエンドを Ruby で書けるというだけでも楽しいけれど、ブラウザ上の PicoRuby.WASM とキーボード上の PicoRuby がつながるデモを見て、とても興奮しました!キーボードがただの入力装置ではなく、LED による出力装置になり、さらにサーバーとしても動くところが、いろんなものが Ruby で動いて繋がる様子が目にみえて、ワクワクした気持ちになりました。
ham-cap
印象に残ったセッション
Programming with a DJ Controller - not vibe coding
タイトルから既に面白そうだと思い楽しみにしていたセッションでした。音楽機器であるDJコントローラーをプログラミング用の入力デバイスとして使用し、入力されてくるMIDI規格のメッセージをRubyで処理するという内容なのですが、2つのエディタを同時に操作するなど通常ではできないことが可能になったりしていて興味深く拝見しました。また、終盤にはRactorによる並列処理のデバッグ時に複数ワーカーのログを読むのは大変だからという理由で、それぞれのワーカーのログに音階やドラムの音を割り当てることでログ出力を音楽のようにするというデモをされていて、まさに「その発想は無かった…!!」という気持ちになりました。非常に遊び心にあふれたセッションで、型にはまらずに楽しめばいいんだということを思い出させてくれる内容だったので、強く印象に残っています。
nsgc
印象に残ったセッション
Digits, Digits, and Digits
私は tompng さんの BigDecimal の高速化の発表が印象に残りました。途中から「数式をどう実装するか」ではなく、「数や式をどう見るか」の話になっていくのが興味深かったです。
特に、
exp(1.111111111111...)
をそのまま計算するのではなく、
exp(1) * exp(0.1) * exp(0.011) * exp(0.0001111) * ...
のように分割していたのが印象的でした。
「値」としてではなく、「分解可能な構造」として数を扱っている感じがして面白かったです。
また、
((((((1×2)×3)×4)×5)×6)×7)×8...
と
((1×2)×(3×4))×((5×6)×(7×8))...
は数学的には同じでも、計算構造を変えるだけで性能が大きく変わる、という話も印象に残りました。
最初の「宇宙規模の桁数を計算したい」というロマンっぽい導入から、最後まで “Digits, Digits, and Digits” な発表で楽しかったです。
haruguchi
印象に残ったセッション
(Re)make Regexp in Ruby: Democratizing internals for the JIT
makenowjust さんによる、Ruby の正規表現エンジンを作り直すという発表でした。
当初は YJIT / ZJIT を活かして Onigmo のパーサや文字クラスを Ruby API として公開し、マッチング部分を Ruby で書き直す、という提案だったそうですが、Ruby の正規表現の前処理を深掘りしていくと、正規表現リテラル/.../ と Regexp.new で経由する処理が違っていたり、Prism と parse.y でも挙動が分かれていたりと、想像以上にカオスな実態が明らかになっていきます。
そこから話は「Onigmo ごと作り直そう」という Project Naraku の構想に発展していくのですが、前処理の複雑さという課題に対して、部分的な改善ではなくエンジンそのものを作り直すという思い切った構想に強く惹かれました。
普段なにげなく書いている正規表現の裏側にこれだけの世界が広がっていて、それを引き受けて作り直そうとしている方がいるということに、Ruby コミュニティの厚みを感じたセッションでした。
junk0612
印象に残ったセッション
Liberating Ruby's Parser from Lexer Hacks
今年はじめに ydah さんが Lrama に PSLR を機能追加する PR を投げたことで界隈に激震が走ったのは記憶に新しく、これに関して発表するのは間違いないと思っていました。個人的には、昨年の自分の発表と同じようなふるまいや構造にスポットを当てた発表になるのかなと思っていたのですがそうではなく、PSLR を使うと parse.y のどの部分についてどのように改善することができるかに全部振り切った発表で、とてもおもしろかったです。
lex_state を使われ方や成り立ちから6つのカテゴリに分け、それぞれ例を挙げながら PSLR ではこのように解消できるとわかりやすく説明されていました。中には最初から lex_state を使う必要のなかったものも含まれていたそうで、悪魔城あな恐ろしや。layer 6 は PSLR を導入しても原理的に解決できなかったものを指していますが、発表後に聞いたところこれが意外と多いそうで、導入したからバシッと解決といかないあたりも悪魔城あな恐ろしや。ただ、「lex_state とは何なのか」という問題に1つの光明が見えたという点で、この業績は素晴らしいと思います。
終わりに
メンバーそれぞれの視点で RubyKaigi 2026 を満喫することができました!スピーカーの皆様、オーガナイザー、スタッフの皆様、今年も素敵な RubyKaigi をありがとうございました!
来年の宮崎もとても楽しみです!
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